個人の価値を上場させ売買できる「VALU」に否定的な意見を述べるよ

株式投資観点からVALUを考える

好きなアーティストが「VALU」というものをやっているようで盛んに何か売りたがっているようでしたので協力できるものなのかどうか、少し調べてみました。
株式投資の観点からVALUについて考えてみたいと思います。

VALUとは何か

これは要するに個人が株式「のようなもの」を発行し、公開、上場させて売買できる市場を提供するサービスだということ。
その株式のようなものは「VA」といい、VALUサービス上に存在するデータであっていわゆる本物の株式ではない。
VAの発行者は資金の調達ができ、事業の運営などに役立てることができる。
サービス規約上、配当は支払ってはならないが、任意でVA購入者に対して株主優待のようなものを自分の裁量で提供できる。が、義務ではなく、全く提供しなくても良い。
要するにVAは個人が発行できるトレーディングカードのようなもので、VALUサービス上で株式のように取引し、値動きもするため、キャピタルゲインが見込める。
VAの購入、売却の決済手段はビットコインで行われる。

運営会社では法的に問題ないことを念入りに確認されて運営されているようですが考えれば考えるほど投資として考えたときにいろいろ問題がある気がしています。

配当が無い

配当が無い以上、投資とは言えません。実体のないものに価格が付き、価格が乱高下する、これは投機です。
ある程度金銭と換算することができる優待があるとはいえ、その提供も義務ではなく、全く提供していない発行者でも大きな時価総額がついており、実態価値のないものに異常な値段が付くというバブルになっています。とはいえ、サービス開始からまだ間もなく、参加者がどんどん増えている状況であるため、継続的な資金流入が続いており、まだまだバブル初期という見方もできます。いずれにしろファンダメンタルの変化ないまま単に有名だから購入者が多く、価格だけ吊り上がる状況があるということです。

投資指標が無い

東証などに上場された株式であれば、四半期ごとの決算が要求され、決算書を見ることで企業の財務、経営状況を把握でき、投資の指標とすることができますがVALUには何もありません。発行者は任意で決算を公開することも可能かもしれませんが、そんな人はほとんどいないと思われます。

VALUサービス上の単なるデータである

株式であればたとえ上場廃止になったとしても株式は保有している状態ですが、そもそも法的な裏付けのない株式でもなんでもないサービス上の単なるデータであるため、何らかの原因でサービス提供が停止した場合、何にも無くなる。
とは言え、資金を提供した事実は現実としてあるため、発行者はVA保有者に対して継続して善意で優待を提供し続けることは可能かもしれません。
単純にVA発行し資金だけ頂き、飽きたので退会しますという詐欺まがいの行為や
あるいは発行者が死んでしまえば優待の提供は当然不可能になります。
死んでなおカリスマ性を維持し続ける人もいらっしゃるでしょうが優待としての金銭的価値は0になるでしょう。

要するに結局投資ではない

要するに投資ではなく寄付を行うための壮大なシステムであるととらえるべきものであることがわかります。そのシステムの中に例えば優待であるとか、「上場」という表現であったり、随所に株式的なアレンジを加え、宣伝することで「投資になるかもしれない」と思わせ、投機資金を呼び込んでいる状況と思います。
「今はビットコインによる配当は認められていませんが」といった「将来そうなるかも」と期待させるかのような表現でブロガーなどに宣伝される記載が見られます。
おそらくビットコインであっても金銭的な配当を支払ってしまうと有価証券の扱いで法的に問題が出てきてしまうような気がします。そのへんはプロの解説を参照いただきたいところですが、ようするに配当は将来も支払われない気がしています。

個人を上場対象としている

「会社は誰のものか」というのが話題になったことがありましたが
株式会社というのは(あくまで帳簿上ですが)株式がすべての価値を表します。
株式は資本金であり、「いくらの資本金を元に、いくら売り上げ、いくら利益が出た。だからこれだけ配当します」という形で計算されます。
ところが個人そのものを上場対象として考えた場合、
その個人の価値、存在そのものがVA総額としてあらわされることになり、これを株式としてとらえると恐ろしく、「その人の生み出すすべての価値の源泉がVAである」と考えることもできます。VAを評価基準とすることでVA以外の基準がなく、個人の評価としてVAとVA以外の部分が区分できないのです。

発行者がたまたま事業領域と関係ないところで宝くじを買ったところ高額当選したが、その資金はVA調達した資金である可能性があり、優待で還元されることを期待されるかもしれません。
話は極端ですがようするに個人を上場対象としており個人と資金調達事業者としての会計を分けることができずうやむやにならざるを得ません。
実際に建前として分けることは可能だと思いますが、個人のあらゆる経済活動を資金調達事業者としての会計に算入するメリットが何もなく(税金が安くなるわけもなく)むしろ算入しないほうが得になります。「VA調達資金のおかげで儲かったことにする」と優待に還元されることを求められる可能性があるため、儲かったのはたまたまか私の努力であってVA調達資金のおかげではないと言い切ってしまった方が良いのです。
「VA発行者の完全なる善意に期待する」以外の基準が無いのです。
したがって優待部分においてのみ考えても投資判断しうる数字が算出困難です。

優待は一生背負うことになる十字架か

優待を提供すると、株式優待のように継続的な提供が期待されます。
会社勤めにしても会社経営にしても退職するなり経営を譲るなり自分としての終わりをつけることができ、そのうえで会社としては残った人たちで、営業は継続され配当も優待も継続することができます。
個人を上場対象とした場合その期待は個人が背負うことになり一生の十字架になる可能性もあるかもしれません。
優待としてVALUER(VA保有者)に還元することに真面目に取り組む発行者であれば終わり方を考えておく必要があります。
昨日高い金をだしてVAを買ってくれたVALUERに対して「今日でやめます」とは良心があれば言いにくいでしょう。
人ですからいつか死ぬ。それはVALUERも当然了解しているがじゃぁ生きている間は80、90になっても優待が続けられるのか。一切優待を提供しないと決めておられる方もいらっしゃると思いますが、その意味で「わかっている人」ですね。VALUERとしても優待が無いことを承知のうえで投機に参加しているならどうなっても恨むこともないでしょうし、発行者としても「自業自得、知らんがな」で済みます。

最後に

活動資金調達に苦労しているミュージシャン等にとっては応援するファンに資金を出してもらえるかもしれないサービスであり、意味のあるサービスとは言えそうです。

ただそれ以上にぱっと見、まさに玉石混合、ビジネスプランや資金需要そのものがあるのかすら怪しい中で「とりあえずVAを発行してみたら〇〇万円手に入った。まだ売り出すので今のうちに皆さん買ってください」という感じであったり、流動性が非常に低い中でとりあえず購入者がいるから価格だけは吊り上がっていき、「含み益で〇〇万円」イエーイ!!といった一部の広告塔的な発行者と耳の早いVALUERたちの自慢に近いブログ報告にかき消されてもやもや感がヒドイ印象です。

事業資金が欲しい人と支えたいファンをつなぐ新しいサービスといえば建前としては美談ですが随所に株式的アレンジがされており、前述のブロガー周辺の広告効果もあって、投機市場化するのも当たり前という感じです。

自分の好きなアーティストを支えたいという気持ちからVALUERになってみたら価格変動に振り回されたとなればVALUER自身もいい気分ではないでしょう。、VA発行側にしてもファンがそんな思いをしては気まずいでしょう。
これは寄付であって気にしなければ良いといえばそれまでですが、高い金をだして協力してみたが「評価上損失が発生している」ということ自体が精神を不安定にするのは株式取引経験者であればだれもが知っていることです。
たとえ含み益であってもその額が大きければ大きいほど高揚感から気になってしょうがなくなります。

最後に、「VALUをやってもいないのに偉そうなこというな」という批判はあろうかと思いますが「怪しい宗教であっても入信してないのに偉そうなこというな」か「怪しいクスリ(合法)であっても使ったこともないのに偉そうなこというな」ですか。
ある程度理解したうえで怪しい(とは言いませんが)投資経験のない人から見れば怖そうなものには近づかないのが防衛本能だと思います、
株式投資、あるいは純粋な寄付のほうがよほど健全であろうと思います。


VALU売買のトラブル事例

最近株式市場の動きもぱっとせず売買していないのですが話題のVALUでトラブル(と本人は言っている)事例について株式投資観点から考えてみたいと思います。 トラブルになったと訴えているその人は にしきよさんという方です。 VALUユーザー間でのトラブルに巻き込まれた。 相手の...